管理栄養士国家試験新ガイドラインの、人体の構造と機能及び疾病の成り立ち に新しく追加された「男性生殖器疾患(前立腺肥大、前立腺がん)」についてまとめました。
前立腺とは
前立腺は、精子の運動を助けるはたらきを持つ前立腺液を分泌する器官。膀胱の下部、直腸の前面に位置する。
前立腺肥大と前立腺がん
代表的な男性生殖器疾患に、前立腺肥大と前立腺がんがあります。
これらの違いを確認しておきましょう!
前立腺がん
前立腺の外腺部に好発する悪性腫瘍。高齢がリスクファクターであり、50~60歳以上に好発する。組織学的には、腺がんが多い。
症状
初期には、自覚症状がほとんどない。進行すると、排尿障害や血尿がみられる。
検査
PSA検査:腫瘍マーカーであるPSAの測定を行う。値が高いほどがんの可能性が高くなる。
直腸診:肛門から指を挿入し、前立腺の状態を確認する検査。前立腺がんでは、表面が凸凹で、石の様な硬さの前立腺を触知する。
治療
外科治療、放射線治療、薬物治療、内分泌療法
【内分泌療法】
男性ホルモンによりがんが進行するため、抗アンドロゲン薬などを用いてがんの進行を抑える。
前立腺肥大
前立腺内腺部の良性過形成により、下部尿路機能障害を呈する疾患。加齢に伴い増加する。
症状
排尿障害、畜尿障害
検査
PSA検査:軽度上昇
直腸診:表面はなめらかで弾力のある前立腺を触知する。
治療
<外科治療> 経尿道的前立腺切除術など
<薬物治療>
- α遮断薬:前立腺の平滑筋を弛緩させることで尿の通過を容易にする。
- 抗男性ホルモン薬:前立腺の肥大を抑制する。
関連問題
管理栄養士国家試験では、前立腺がんの腫瘍マーカーについて出題されたことがあります。
他職種の国家試験も、参考までにチェックしておきましょう。
第101回看護師国家試験午後-34(厚生労働省HPより)
問. 前立腺癌について正しいのはどれか。
(1) 骨への転移は稀である。
(2) 血清 PSA値が上昇する。
(3) 内分泌療法は無効である。
(4) α交感神経遮断薬が有効である。
答. (2)
解説
× (1) 骨への転移は起こりやすい。
前立腺がんは、骨・リンパ節への転移が起こりやすい。
○ (2) 血清PSA値が上昇する。
× (3) 内分泌療法は有効である。
がんの進行には、男性ホルモンが関与しているため、抗アンドロゲン薬や女性ホルモン製剤などが治療に用いられる。
× (4) α交感神経遮断薬が有効である。
前立腺肥大症に関する記述である。
第108回看護師国家試験午後-85(厚生労働省HPより)
問. 前立腺肥大症で正しいのはどれか。2つ選べ。
(1) 進行すると水腎症となる。
(2) 外科治療は経尿道的前立腺切除術を行う。
(3) 直腸診で石の様な硬さの前立腺を触知する。
(4) 前立腺を縮小させるために男性ホルモン薬を用いる。
(5) 前立腺特異抗原(prostate specific antigen:PSA)値が 100 ng/mL 以上となる。
答. (1),(2)
解説
○ (1) 進行すると水腎症となる。
排尿が障害され、腎臓に水が溜まる。
○ (2) 外科治療は経尿道的前立腺切除術を行う。
× (3) 直腸診で石の様な硬さの前立腺を触知する。
前立腺がんに関する記述である。
前立腺肥大では、表面はなめらかで弾力のある前立腺を触知する。
× (4) 前立腺を縮小させるために抗男性ホルモン薬を用いる。
× (5) 前立腺特異抗原(prostate specific antigen:PSA)値が 100 ng/mL 以上となる。
前立腺がんでは、PSA値が100 ng/mL 以上となることがある。前立腺肥大では、PSAの軽度上昇がみられる。